自称人類が害悪電波を流すブログ

ポケモンとかドラクエとかの雑記 電波につきPC崩壊注意 ※バルバトスさんとは無縁の紳士です

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散文書いたヤツ晒し

るるさんのくれた「ラーメン」の一言から着手した作品です



自分で言うのもアレだけど  駄作(


↓以下駄文注意↓
夢一杯、ください



今宵もかなり冷え込んできた。腕時計を見ると、既に午後の十時四十分を少し過ぎている。凍てつく風を嫌って、首をすくめてうつむいた。そろそろマフラーも必要となる時期だろうか。そういえば職場の女性陣も柄が云々トレンドがどうこうと話していた。まあ、オッサンと呼ばれかねない歳になった自分には殆ど関わりのない話だろうが。冷たそうなコンクリートを見ながら歩みを進める。
 ふいに、良い香りが鼻をくすぐった。ここは博多の街、様々な屋台が立ち並ぶ街道。駅前など立地条件の良いところに近づいてくると、場所取り合戦も行われるほど多くの屋台が集まっている。僕は再度時計を見た。自宅に帰り着く頃には妻は寝ているだろう。普段はスーパーで酒とつまみを買って帰るのだが、たまには。そう思い、僕はふらりと近くの暖簾をくぐった。

「らっしゃい」
 ずんぐりとした店主の快活な声が耳に響く。他に客はいなかった。とりあえずビールを注文し、一番端の椅子に座る。店主は慣れた手つきでグラスにビールを注いでこちらへ差し出した。ちまちまとそれを飲みながら、メニューを見て肴の選別をする。特に見もせずに入ったが、どうやらここはラーメンの屋台らしい。ちょうど良い、シメに一杯食おうか。そう思いながら僕が餃子を頼むのとほぼ同時に、何人かのサラリーマン連れが入店してきた。
「よう親父、ビールと焼き鳥、人数分頼むよ」
「へい了解っ」
 一人は常連客なのだろう、連れと談笑しながら席に座るよう促した。小さい屋台はすぐに満席になる。
「でさ、昨日の取引先がさあ……」
どうやら金融業の輩らしい。良く判らない単語がちらほら聞こえるが、取引先の愚痴など職場内でありがちな話題が繰り広げられているようだ。僕には経済の知識があまり無いが、株取引でボロ儲けしたとかいう話を聞く度に手を出そうか迷い、そして怯えて止めるのが恒例となってしまっている。
「お客さんたちは金融やってるのかい?」
「おう、これでも南日本銀行の営業マンやってんだぜ」
へえ、と呟いた店主が、何故か楽しそうに会話に加わる。話題に付いていけない自分は、それでも話に耳を傾ける。こういうのは半分酒の肴みたいなものだ。理解が出来ずとも、喧噪に耳を貸すだけで十分楽しめるものである。

「いやあ、懐かしいな」
心底楽しそうな店主がそう呟いた。懐かしいとはどういうことか、その言葉を代弁するかのように、
「懐かしいって?」
と、客の一人が問う。
「いやね、ちょっと前まで私も金融会社に勤めてたんですよ」
なるほどそういうことか、通りで奇妙な単語に柔軟に対応できているわけだ。
「へえ、先輩でしたか。定年ですかい?」
「いや、辞職したんです」
辞職。南日本銀行というと、ここらでは割りと大手の金融会社のはずである。
「そりゃまたなんで?」
「あれ、分かりませんかね?」
分かるも何も、定年以外で大手の会社を簡単に辞める人間などいるのだろうか? 僕と同様の理由で客たちも答えに詰まっているらしく、難しい顔をして顔を見合わせている。
「屋台、一度やってみたかったんですよ」
一瞬の沈黙。
「へ? そんな理由なの?」
ちょっと失礼な言い方ではあるが、僕も概ね同じ意見を出したかったのでちょうど良い。しょぼくれた様子の店主は、
「まあ、一般的に見れば下らない理由ではあるでしょうけど」
やや寂しそうにそう言って、それからこう付け加えた。
「夢だったんですよ、長年の」
夢。何故かその言葉にびくりとした。歳だろうか、こんな言葉を聞くとどうしても自分の若き頃を思い返してしまう。
「会社勤めして、毎日淡々と暮らす内にふいに幼い頃の夢を思い出したんですよ。そしたらもう無性にやりたくなって、会社に辞表叩きつけて飛び出してきちゃったんですよ」
照れくさそうだが誇らしげな店主の表情。その顔が何故か、僕の心を浅くえぐった。
「はー、そりゃずいぶんと思い切ったことをしたね」
「ええ、いてもたってもいられなくて、ね」
そんなものなのだろうか? 自分には到底信じられないが、人間の心とはなんともまあ単純にことを決めてしまうらしい。
「年収とか大丈夫なの? 屋台って収入カツカツって聞くけども」
「いや、確かに前よりはきついですけども。せっかく夢を叶えたんですから、これくらい覚悟で頑張っていきます」
そう言って、苦笑い。彼の口から『夢』と発せられる度、何かが僕の心を嘲笑い、通り過ぎていく気がする。
「夢、ねえ。もう今更求めてもなあー」
「そんなものだと思いますよ。おそらく私が物好きでとんでもない馬鹿をやってるだけですので」
一同に笑いが寄せる。僕はビールをもう一杯追加して、ぐいっと飲み干した。
「一度は俺もそんな馬鹿やってみたいもんですよ」
やれますよ、いつでも。僕はぼそりと呟いたが、届くことはなかった。

 どうして今の僕は夢を持ってないのだろうか。別に自分だって若かりし頃の夢くらいあっただろうに。叶えられなかったから忘れてしまったのか? これ以上自分が望むなにかを失ってしまった、可哀想な大人。そう考えるのが嫌で、若い自分に怒られそうで、僕は考えを閉ざした。
そうこうしているうちに、グラス四杯は飲み下していたらしい。かなり酔っているのだろう、顔が熱いのがわかる。あまり上戸なわけでもないのだ、そろそろ止めなければ。しかし僕の肴はまだ話を続けるらしく、僕はもう一杯、ビールを頼んだ。
「夢を追う中年ってのは恰好良いじゃないか、若いねえ店主」
 酔いが回っているのだろう、怪しい呂律で先ほどから同じことを続けている。隣にいる、グラスの数からすると中々の酒豪であろう男が、締めのラーメンを頼んだ。僕は思い出したかのように腕時計を見る。十一時四十分。あと三十分もすれば終電が来てしまう。自分もこの中身を下したらラーメン食って帰ろう。せっかく屋台に来たというのに、一時間余りも独りで酒ばかり飲んでいるのはおかしな話であるが。
「へい、ラーメン上がりっ」
店主が丼を次々と渡していく。温かな蒸気と豚骨スープの香りがこちらにまでなびいてくる。客たちはそれを啜るなり、旨いだのなんだのと称賛の言葉を浴びせた。店主が照れ笑いしながら、
「練習したんですよ、簡単そうに思ってましたが、スープの味が難しくて」
「やっぱりいつ食っても旨いな、ここは」
そう常連の男が言う。ここまでべた褒めする贔屓の客がいるのか。若干の期待を持ちながら、グラスの中身を飲み干した。
「僕にもラーメン一杯」
そう言うのとほぼ同時に、他の客たちは勘定を頼み、またやかましく去っていった。
 しばしの沈黙。急激に眠くなった。
「お客さん、どうぞ?」
うつぶせになっている僕が気がかりなのだろう、遠慮がちに器を横に置いた。起きて食おうと思ったが、体を動かすのが億劫なほど眠い。店主は心配そうにうろうろしているが、申し訳ないことに僕はまどろみの最中にいた。

「なんでさ」
突如、口を開いたのは僕だった。このあたりの記憶はおぼろげだが、会話内容は何とか記憶に繋いでいる。
「会社辞めてまでラーメン屋とかしちゃうわけ? 夢は所詮夢だった、そう割り切っちゃダメなわけ?」
意味がわからない、といった顔をされたのは覚えている。僕はそれを無視して先を続けた。
「僕も夢くらいあったさ、昔は。でも流れるままに生きてきて、忙しくて、そんなものは忘れちまった。店主みたいに思いだせるのは……一体いつなんだろうね」
夢を思い出せたら。若かった自分が戻ってくるのだろうか。そんなことはないのかもしれない。でも夢がないことが何故か無性に悔しくて、僕は見も知らぬ店主に、夢を掴んだ男に対して、自嘲的に世迷い言をぶつけていた。全く意味のない、はた迷惑な愚痴であろう。それに気付き、僕は口を閉ざして体を縮めた。
いきなり酔っ払いに絡まれた店主は、しかし煙たがりもせず、顎に指をあてる。やがて彼は、
「今すぐ夢がなければ生きていけない、それを叶えなきゃ人生損する、なんてことはないと思いますよ」
そう呟いた。僕が眉をひそめると、
「人は生きる間、たくさん夢を見ます。そのうちの一つくらい、忘れているうちに叶ってたりするかもしれない」
例えば、と彼は前置きして、左手を此方へ差し出した。しばらく僕はそれを見て、店主の意図を掴み切れず、首をかしげる。すると彼は僕の左手を指さし、
「私は、家族がいる人が、ちょっとだけ羨ましいです」
そう言って笑った。彼の手は僕のそれよりずっとごつごつと節くれだっていて――薬指には、粗末な飾りもそこになかった。
身近なものだと思っていた家族。だが、確かにこれも、若いころの夢の一つだった。大筋の夢みたいなものがあるとしたら、それは結婚ではなかっただろう。でも、大きな位置を占めない夢だったとしても、確かに叶っていた。それは僕を支えてくれていた。ああなんだ、と僕は拍子抜けした。こんな簡単に見つかるならば、考えずともわかったものだろうに。自分が情けなくて、それでも僕は感謝した。夢であった僕の子供と妻に、そして目の前の店主に。

「もうすぐ終電ですね」
店主がそう言うのを聞き、時計に目を走らせる。酔いは割と醒めていた。ああ、結局ラーメンを食い損ねた。勘定の時そう僕が言うと、店主は笑って
「またお越しください」
その言葉に軽く一礼し
「御馳走さま」
次は友人も連れてこよう、そう笑って屋台を出た。
 冷たい風は相変わらずだった。身を切るように過ぎる風、しかし僕はまっすぐ前を見ていた。日曜日、久しぶりのショッピングにでも連れて行ってやろうか。そう考えながら、僕は帰路へと戻った。暖かく感じるのは、酒のせいでも、屋台の熱気のせいでもないと思う。




おっしまい
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Author:自称人類
主にRPGについて連ねていくブログ
といっても日記になったりボクっ娘Loveを語ったりする可能性は高い(
変態さんのメモ帳と思って見てくださいな

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